涅槃

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仏教の理想とする究極の安らぎ、すべての煩悩を滅ぼした境地、それが「涅槃」と呼ばれる。 末世の一僧侶の私になど、想像することさえむつかしい境地だ。ただ、一般に「涅槃」と言えば、ブッダの死のことである。そこで思うことがある。

伝道を続けるブッダは、最後の旅の途中、ある信者が供養 した食べ物が原因で、重病を発し、それが結局死を招く。そのとき、病に苦しみながらも、ブッダは、食事を供養した信者が、自分の死に責任を感じて後悔の念に苛まれないように、こう話して聞かせなさいと、弟子に言い残した。
「友よ。あなたの供養を受けて、ブッダは無上の完全な悟りに達した。 この供養の食物を食べて、煩悩の残りの無い涅槃の境地に入られた。君は大きな功徳を積んだ。君は天に生まれる行いを積んだ」

私は涅槃の境地がどういうものか知ることはできない。だが、このような言葉を死の床にありながら言い得る人が、涅槃の境地にあったことを、信じることはできるのだ。

南直哉 合掌